対談 その5
2012年7月6日
「真夏の夜の夢」で重要な役、ティターニアとボトムのお二人の対談です。パックのイタズラでロバにされてしまったボトムと惚れ薬をかけられ眠りから覚めた妖精の女王ティターニアのパ・ド・ドゥはいつも見逃せません(o^^o)
以下、Facebookより引用……
<東京シティ・バレエ団公演 真夏の夜の夢 ティターニア役 若生加世子さん、ボトム役 佐藤雄基さんにお話しを聞きました>
佐藤:真夏の夜の夢は、9年前の初演から、かれこれ8回目かなぁ。1回出れなかったときがあったけど、結構やってるね。
若生:久しぶりですよね。7年ぶりくらい?
佐藤:初演のときは、創ってる最中は、この作品どうなるんだろう、ごちゃごちゃしててわけわかんないな~、面白くなるのかな、って思ってやってたけど、いざ劇場でセットの中でやった時に、いろいろアラもあるかもしれないけど、面白いのかなぁ、って思ったんだよね。ストーリーは難しいけど、子供でも見やすくできていて、自分はその中で楽しくできたらいいのかな、って思えたんだよね。
__今日のリハーサル見てました。今となっては、ボトムのキャラがはまってますよね (笑)
佐藤:どんな感じだった?だいじょうぶ、僕?
今回、職人と一緒に踊るシーンがなくなったからね。
「ボトムはリーダーだから今回こうしてみよう…」って踊りが減って芝居が増えることになって、結果今日みたいになってる(笑)
それでティターニアとパ・ド・ドゥを急にやって、この役だれ?ってことにならないか逆に心配。だから、職人のみんなに申し訳ないなって思うんだけど、芝居で目立つ感じに創ってるのね。
ストーリー的にもこれくらい芝居をしとかないと、ボトムが目立たなくなっちゃうんじゃないかな、って思って。
__派手な芝居をしなくても、あの職人のメンバーの中ではやっぱりボスですよ。存在の仕方にキャリアも貫禄も見えてました。それに加えて、芝居も際立っていて笑っちゃいました。
佐藤:じゃあよかった。もうみんな半分くらいの年齢になっちゃうんだよね(笑)
僕としては、リハーサルではわりと好き放題やってみて、だめだったら注意してもらうっていう感じの、フリー演技になってる。
今回、全体的にキャストが若返ってるよね。
昔は、周りがベテランだったから、阿吽の呼吸で、毎日違う芝居をしてても成り立ってた。
今回、ダンサーが全員若くなってるからかな、まだみんながばらばらになっちゃう時があるよね。誰かが誰かの芝居をつぶしちゃったりとか、他の人のきっかけにかぶっちゃったりとか、周りが見えてないところがある。だんだんまとまってはきてるけどね。
その場その場でリアルに芝居をしていく自由さっていうのが難しくて、他人の動きだったり音とかを把握していて初めて許されるっていうのかな。自由にやっていいっていうことが、どういう制約の中で自由なのかっていうのをもうちょっと若い世代には理解してもらいたいかな。無秩序が自由っていうことじゃなくてね。そういうことをだんだん知っていってもらいたいよね。「出るところは出る」けど、「引くところは引く」、この、「引く」っていうのが難しくて、特殊技能になるからね~。みんな出れるけど、周りを見て上手に引ける人はなかなかいない。
その辺も伝えながらうまくリハーサルしていかないとなって思う。
これからの若い世代には、そういうことも自覚して、ただ自分がレッスンするだけじゃなくて、リハーサルを見るであるとか、いろんな経験をしていってほしいと思いますね。
__ティターニアはどうですか?
若生: 初めての役で、ちょっと戸惑うところが多かったんだけど、だいぶ慣れてきたかな。ボトムを誘うシーンもね。
__初演からずっと安達悦子さんがやってた役で、悦子さんも最初戸惑ってたよね。(安達悦子:芸術監督)
佐藤:でも、作品がちょっと愉快に出来てるから、いやらしくやってもそんなにいやらしくは見えないって思うんだよね。
ちょっとエッチな感じに見えるところもある、だけど、結局馬鹿でした(笑)みたいな後味に収まればって思う。
中島先生には、もっと生々しくと要求されるんだけど、実際見てみると、そんなに生々しく見えないっていうか、サラッとしてて、ほんとに笑いの一部っていうかデフォルメされてる感じのシーンな感じに見える。
僕は大丈夫だけど、ティターニアとしては厳しいよね?
(中島先生:「真夏の夜の夢」演出・振付)
若生:わたし、実は初めて中島先生のパ・ド・ドゥをやるんです…
佐藤:そうなの!?
若生:だから、最初はリフト一つとっても、よくわからなかった。
ビデオで見てもどうなってるのか全然わからない(笑)
星のシーンでオーベロンと踊るところと、ボトムと踊るシーンでは雰囲気は全然変えないとならなくて、ボトムとの方は魔法にかかって踊ってるようにしないといけない。
わたしとしては、ボトムとの方がやりやすいシーンで、短いし終わり方もコミカルだし、動きも型にはまってないし、自由にできる。
オーベロンと踊るシーンはきっちりバレエシーンだから気が抜けない。それに加えて、先生たちが言ってくれるキーワードが、「場を制する」とか「自分が世界の中心」とか、そういう言葉をいただくので、その言葉だけで、自分にできるかな…って思っちゃう。
佐藤:そういうのってすごく難しいんだよね。あそこは、完全に美しく創らなきゃならないわけでしょ。最後の最後に、綺麗なバレエのシーンを見せるって、口から心臓出そうになっちゃうくらいイヤなところだよね。
でもね、セットと照明、衣装があると全然気分が変わる。すごく助けられるよ。もう、やるしかないやってなる。
若生:そうですね。 劇場の舞台でやったら気持も変わるしね。
ティターニアは、ギリシャ神話のアルテミスとの間に生まれた月の女神と考えられていて、妖精の女王として君臨しているのに、自然の中でのびのびと生きている。そんな威厳の中にも妖精の可愛らしさみたいなものも表現していきたいです。